第三部
山崎 恵子 先生
椎原 春一 園長
(司会進行 末永 麻裕 さま)
「動物の幸福と、私たちはどう向き合うか」
司会進行に末永麻裕さまをお迎えして、いよいよ山﨑先生と椎原先生のコラボレーション講演会が始まりました。末永さまは予め質問を8つほど用意してくださいました。
最初は第三部から参加された方のために、椎原先生より大牟田市動物園の代表的な取り組みをお話しいただきました。
また、それを受けて、山﨑先生よりその取り組みへの感想と、海外の先駆的な事例(米国ソノラ砂漠博物館の取り組み等)のお話をいただきました。
3つ目の質問は大牟田市動物園で、何故、ゾウを飼うことを止めたのか、またホワイトタイガーについても、今の個体を最後に今後、飼育をしないと決断した理由やその反響についてお尋ねいただきました。
椎原先生からは「ゾウは群れで生活する動物であるが、当園ではその飼育スペースが確保できないことが理由」であること、また、ホワイトタイガーに関しては「劣性遺伝により白い個体が出るため、近親繁殖で血が濃くなり過ぎ、腰や目、内臓に異常を抱えやすいため、人気があるからといって、むやみに繁殖をすることをしたくない。このことを説明した看板を設置したらSNSで炎上したが、伝えるべきところは伝えないと、と思う」等のご回答をいただきました。
それを受けて、山﨑先生にこの決断についてのご意見、また他の動物園では今後どう取り組むべきかのお話をいただきました。
※ 因みに大牟田市動物園では以下の新聞記事(一部抜粋)のような取り組みもなさっています。実はこの記事でもクレームが来たそうです。皆さまはどうお考えになりますか?
5つ目の質問では、椎原先生が大牟田市動物園で「福祉」をキーワードにしようと思ったキッカケやその必要性、また逆風にどのように取り組み、何を心掛けているのかをお尋ねいただきました。
椎原先生はご自身の過去のご経験を例に上げ「彼ら動物たちに「本来的にやりたいことが出来る環境」を作って行きたい。「可愛い」や「可哀そう」だけでは何も始まらないので、今の動物の現状を知ってもらうことが大切であり、そこに問題があることを知って初めて解決しようという気持ちになる。動物や動物園に対するイメージが変わることで、世界の環境破壊や動物たちの絶滅にも意識が拡がるのでは」等とお話しくださいました。
椎原先生のお話を受けて、司会者から「なぜ、日本でこういう取り組みが拡がらないのか」との質問がありました。
山﨑先生からは他国と比較した日本人の特性からのご意見をいただきました。
椎原先生からは、既存の動物園に憧れる人が飼育員になることも動物福祉が拡がらない一端を担っているのかも、というご意見も出ました。
6つ目の質問では大牟田市動物園では、ゾウを飼育せずして来園者が増加したり、他の動物園やメディアから注目を集めている理由についてお尋ねいただきました。
椎原先生は、先ずは来園者数の増加(年間13万人から20万人へ)がメディアの注目を浴びたことにより、どうしてそうなったかの理由に着目されたことだと説明されました。インターネットでの園の評価が両極端に分かれていることを例にとり、まだまだ不十分ながら、徐々に世の中が動物の福祉に目を向けつつあるのかもと仰いました。
山﨑先生からも日本の所々に存在する動物福祉に着目した施設のご紹介をいただきました。ただ、それらの施設と大牟田市動物園の最大の違いは、園としての姿勢、ポリシーとして動物福祉を推進するということを掲げていることではないか、とのご意見でした。
7つ目は、6月に改正動物愛護法が公布されたことに関して、どのような法律明記が必要だと思われますか?というご質問をいただきました。
その質問に思わず顔を見合わせて苦笑される両先生でした。
環境省の動物愛護部会審議委員を務める山﨑先生、そして椎原先生からも「全くの犬猫愛護法になっている」とのご意見をいただきました。犬猫以外の動物に関しては全く盛り込まれておらず、今後、あらゆる動物を守る法律に持って行きたいとのお話でした。
これまでのお話を受けて、両先生に動物福祉を更に拡げて行くためにどうしたら良いのかお尋ねいただきました。
山﨑先生の方からは「用語をきちんと普及させることが大切(動物福祉≠アニマルウェルフェア?)。視野を広く持ち、うちの子だけに留まらず、他の動物たちに思いを馳せること。情報を知った人が、知らない人の背中をちょっと押す。」等のアイディアが出されました。
椎原先生からは「face to faceが一番伝わるので、例えばメディアの方など、直接会った方に情報をきちんと伝える。また、これから動物福祉がもっと普及してきたら、その施設が本当に福祉に配慮しているかを見分ける目が必要になってくる。また、施設側も透明性を保つことが大事になってくる」とのご意見をいただきました。
司会者よりの8つ目の質問は、両先生に「動物福祉について私たちが身近で考えたり実践できることは何かありますか」というものでした。
山﨑先生は開口一番「メディアを信じてはだめ。」と仰いました。その上で「例えば、卵を購入する時には鶏に何を与えているのかではなく、どういう状況で飼われているか明記してあるものを選ぶ。例えば、動物の飼い方に困っている人を、飼い続けられるようなサポートを充実させる(米国ではフードバンクにペットフードも取り扱われるようになった)。結局は身近でやれる地道な作業の積み重ねなのではないか」と仰いました。
椎原先生からは「自分のできる範囲を考慮した上で適正な数や種類の動物を飼うことも福祉につながるのでは」というご意見をいただきました。
司会者からの質問は以上だったのですが、最後にそれぞれ、お互いに質問の交換を行っていただきました。山﨑先生から椎原先生へ、そして椎原先生から山﨑先生へ、非常に興味深い質問が出され、無事に講演会が終了いたしました。
両先生、ご参加いただきました皆さま、会場をお貸しいただいた福岡ECO動物海洋専門学校さま、スポンサーになってくださったGMECさま、そして、ご関心をお寄せいただきました全ての皆さまに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
アニマルリレーションシップdeux
松島美穂 記
この後、その4として、皆さまよりいただきましたご意見・ご感想をご紹介させたいただきますね!(その4、ご参加者さまのお声へ続く)
その4 ↓
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